即身成仏

お大師様の言葉を紹介します。
この詩文は
龍猛菩薩造『菩提心論』の結びに記され、
お大師様の『即身成仏義』『秘蔵宝鑰』に引用される
最も重要なもの。
その内容は必ず師のもとで実習します。

若人求佛慧
もしひとぶってをもとめて
通達菩提心
ぼだいしんにつうだつすれば
父母所生身
ぶもしょしょうのしんに
速證大覚位
すみやかにだいかくのくらいをしょうず

仏の智慧を求め、
悟りを求める菩提心を決意すれば、
この身体に悟りを得ることが保証される。

参照:近藤堯寛著『空海名言辞典』
高野山出版社(平成31年改定版第2刷)

真如非外

馬頭観音堂 8月28日朝

つらいときや苦しい時、
その原因は外にあると思ってしまう。
他人のせいにしてしまいがち。
でも解決する鍵は自分自身。

お大師様の言葉を紹介します。
『般若心経』解説の序文一部です。


夫佛法非遥
心中即近
真如非外
棄身何求
迷悟在我
則発心即到
明暗非他
則信修忽証

夫(そ)れ仏法(ぶっぽう)、遥(はるか)に非(あら)ず。
心中(しんじゅう)にして即(すなわ)ち近(ちか)し。
真如(しんにょ)、外(ほか)に非(あら)ず。
身(み)を棄(す)てて何(いずく)んか求(もと)めん。
迷悟(めいご)、我(わ)れに在(あ)れば
発心(ほっしん)に即(すなわ)ち到(いた)る。
明暗(みょうあん)、他(た)に非(あら)ざれば
信修(しんしゅ)に忽(たちま)ちに証(しょう)ず。

『般若心経秘鍵』より
参照『十巻章訓読編』(令和5年3月、真言宗智山派)

夏月涼風

暑中見舞い申し上げます。
お大師さまの言葉を紹介します。

夏月(かげつ)の涼風(りょうふう)
冬天(とうてん)の淵風(えんぷう)
一種(いっしゅ)の気(き)なるも
嗔喜(しんき)同(おな)じからず

夏の日にそよぐ涼風
冬の日に吹きわたる川風
おなじ一つの気ではあるが
人が喜んだり
腹を立てたりするのは
同じではない

『性霊集』巻第一「徒に玉を懐く」より
『弘法大師空海全集』第6巻p.179f.参照

寺の西側より住職撮影(7月27日)
田んぼの向こうに諸堂と加護坊山を望む

お盆月を迎えます。
こころおだやかにお過ごしください。

人よく道を弘む

(松景院大師堂)

6月15日はお大師さまの誕生日
本年はご誕生1250年慶讃年

お大師さまの「ことば」をご紹介します。


筏(いかだ)はよく済(わた)し、
車はよく運ぶ。
然れどもなお、御(ぎょ)する人なければ
遠きに致すこと能わず。
柁(かぢとる)師なければ
深きを越ゆること能わず。
道もまたかくのごとし。
人を導くは教なり。
教を通ずるは道なり。
道、人なきときは
則ちふさがり、
教、演(の)ぶることなきときは
則ち廃(すた)る。

… 中略 …

いわゆる(『論語』衛霊公15)
「人よく道を弘(ひろ)む」という。
この言(こと)、実(まこと)なるかな。

「故贈僧正勤操大徳影讃并序」
『弘法大師空海全集第6巻』p.651ff.
他参照

空と雲

高野山で過ごすお大師様は
その光景を詩文にしています。

意(こころ)ある天公、
紺の幕を垂れたり。
龍王篤信にして
白き帳陳(とばりつら)ねたり。

天はわれに同情してか、
紺色の幕(青空)を垂れた。
雨を司る竜神はあつく信頼して
白い雲をたなびかせた。

山中に何の楽(たのしみ)かある
「遍照発揮性霊集巻第1」より
(『弘法大師著作全集第3巻』参照)

御瀧三十六童子

迷悟明暗

迷悟明暗(めいごみょうあん)

境内の高野槙と桜葉

迷悟(めいご)、我(われ)にあれば、
発心(ほっしん)に即到(すなわちいたる)。
明暗(みょうあん)、他(た)にあらざれば
信修(しんしゅ)に忽證(たちまちにしょうず)。
『般若心経秘鍵』

困難と幸福、光と闇。
他(そと)ではなく、
我(われ)にある。
高い空、深い海、広い空間。
そよ風、青葉、響き、時間。
道筋(鍵)は「こころ」。

【住職意訳】

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本堂の内壁全面を杉板で補修しました。
工事完了(令和5年4月22日)

如実知自心

如実知自心
にょじつちじしん

云何菩提。謂如實知自心。
いかんがぼだいとならば、
いわくじつのごとくじしんをしるなり。

【悟りとは自分の心を正しく知ることである】(住職意訳)

このフレーズは『大日経住心品(だいにちきょうじゅうしんぼん)』に説かれ、お大師様自身その著作になんども引用敷衍なされます。

己の心に向き合い、そのあり方を知る。
知る行為者は自分、知る対象は己の心。

春になれば花が咲くことを前もって知っているように、道筋を正しく判断することが「如実」に意味されます。

座右の銘

無道人之短
(ひとのたんをいうことなかれ)
無説己之長
(おのれのちょうをとくことなかれ)

この漢詩は「崔子玉座右銘(さいしぎょくざゆうめい)」の冒頭の対句で、筆字は弘法大師と伝わります。当山ではその複製掛け軸を蔵します(写真)。

お大師様は自ら書写したこの詩文をまさしく「座右の銘」として身近に置き繰り返し読んでいたことが想像されます。

【ひとの短所を言うな 自分の長所を述べるな】(住職意訳)

動じないこころを常にもち続ける不動尊憤怒の誓願が重なります。
あの日から12年、13回忌。合掌

早春に遇う

本堂前の垂れ梅のツボミ (2023年1月28日)

本年令和5年は弘法大師ご誕生1250年に相当。
お大師様の「ことば」を紹介し慶讃します。


「過因の詩」『拾遺雑集』7、『経国集』11
(読み下しと意訳は住職)

莫道此華今年發
いうことなかれ
このはなこんねんひらくと

應知往歳下種因
まさにしるべし 
おうさいしゅいんをくだすを

因縁相感枝幹聳
いんえんそうかんし 
しかんそびゆ

何況近日遇早春
なんぞいわんや
きんじつそうしゅんにあうをや

この花は今年に咲くというのではなく、過ぎし年に根を張る種が原因で、条件が互いに整って枝と幹が伸びたことを知るべきである。
ましてや厳しい寒さや困難を耐え、ようやくこの春を待って開くのだ。
【花は菩提心の喩え、その花が開くのを知るのは自分】

納め不動の朝

舗装された境内

新設の本堂スロープ

両部五仏の種字を刻字

神仏のご加護のもと、
賜ったご勝縁に思いをめぐらし、
ご廻向申し上げます。

よいお歳をお迎えください。

天下法界平等利益